老化に向き合える時代の到来

いまでは当たり前のように語られる「老化」や「アンチエイジング」。

けれど実は、これらが本格的に向き合われるようになったのは、ほんの最近のことです。

なぜ、これほど長い時間がかかったのでしょうか。
そこには、いくつかの自然な理由がありました。

昔の人は、老化を実感する前に人生を終えることがほとんどでした。

そのため、しわ・白髪・がん・認知症といった、いま私たちが身近に感じている“老いのサイン”や加齢性の病気は、当時はとても珍しい存在だったのです。

  • 研究しようとする人も、ほとんどいない
  • 社会問題として意識されることもない

当然ながら、アンチエイジングを研究するための土台そのものがなかった――そう考えると、無理もないことでした。

つい最近まで、「年だから仕方ないよね」という言葉が、ごく普通に使われていました。

つまり社会全体が、老化を“避けられない自然現象”として受け入れていたのです。

実際、WHO(世界保健機関)も、長いあいだ老化を病気としては扱ってきませんでした。

「老化をケアする」「老化に介入する」――そんな発想自体が、まだ育っていなかった時代だったと言えます。

老化は生き物として自然なプロセスであり、それに抗うことは「自然に逆らうことではないか」という考えもありました。

また、老化を「治療すべきもの」と捉えることで、高齢者に対して「問題がある存在」というレッテルを貼ってしまうのではないか、という懸念もありました。

人間の尊厳を守るために、あえて踏み込まなかった
――そんな側面も、確かにあったのです。

実は、老化の正体そのものが、長いあいだよくわかっていませんでした。

私たちには「2つの年齢」があります

少し意外かもしれませんが、私たちには「実年齢(暦年齢)」とは別に、「生物学的年齢(細胞の年齢)」があります。

近年、この生物学的年齢を測定できる検査が登場しました。

DNAに刻まれる“マーキング”の変化を分析することで、

  • 体がどのくらい老化しているのか
  • 老化のスピードは速いのか、ゆっくりなのか
  • 将来、どんな健康リスクが考えられるのか

といったことが、科学的に「見える化」できるようになってきたのです。

次のような「老化の仕組み」が本格的に語られ始めたのも、ここ数十年のことです。(少し専門的ですが…)

老化に関わる主な要素

  • DNAの損傷
  • テロメア(染色体の端)の短縮
  • 幹細胞の減少
  • 老化細胞(いわゆるゾンビ細胞)の蓄積による慢性炎症
  • ミトコンドリアの機能低下

こうした研究が進み始めたのは、1980〜2000年代に入ってから。老化研究は、ここ30〜40年でようやく「科学」として形になり始めた。

――それが、今の現在地です。

老化の課題が長く手つかずだったのは、怠けていたからでも、無関心だったからでもありません。

  • そもそも老いる人が少なかった
  • 老化は自然なものだと考えられていた
  • 尊厳への配慮が必要だった
  • そして、仕組みがわからなかった

こうした条件がそろって、ようやく今、老化に向き合える時代が来たのです。

抗老化(アンチエイジング)は、無理に若さを取り戻すためのものではありません。

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そのスタートラインに、私たちはようやく立ったところなのかもしれません。

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